こんにちは。Beauty Tuning Clinic の西田美穂です。
先日、アラガン社の社員さんの研修会で、「日本人の美意識とこれからの美容医療」というテーマでお話しする機会がありました。アラガン社さんは、美容医療の分野でボトックス製剤とヒアルロン酸製材を取り扱う日本最大手の製薬会社です。
その時お話しした内容の一部をここでご紹介します。
準備をするにあたって、一つのきっかけがありました。
婦人画報2026年5月号に、歌舞伎俳優・松本幸四郎丈との対談です。

対談の中で幸四郎丈は、美しさについてこんなことをおっしゃっていました。
どれだけ努力や手入れをしていても、それが観客に悟られてしまっては「美」として成立しない。あえて完璧から少しずらすことで情緒が宿る。そして、いかに力を抜くか——その緩和によって、自然な美しさが生まれる。

歌舞伎の話としてお話を伺いながら、これは日本人が何百年も前から持ってきた美の哲学そのものだと感じました。そしてそれは、美容医療にも深く通じると思ったのです。
日本人の美意識——侘び・寂び
日本人の美意識として語られることの多い言葉に「侘び・寂び」があります。これは、「完全を求めない」「うつろいを慈しむ」という美意識です。
利休は、完璧に掃き清められた庭に落ち葉を数枚散らして「これでよし」と言った。完璧の中には美がなく、不完全の中にこそ情緒が生まれる。これが侘びです。

寂びは「時間の美学」です。「古くなる・錆びる・朽ちる」を劣化と捉えず、時間が滲み出たものとして美しいと感じる感覚。

加齢を「劣化」と捉えるか、「うつろいの美」と捉えるか。この一点が、美容医療の哲学を根本から変えます。
ただし、「野放し」とは違う
侘び寂びは「何もしない美学」ではありません。
京都の名庭——龍安寺、西芳寺、妙心寺——を見れば一目瞭然です。あの美しさは、庭師が何十年もかけて、苔の一株一株を理解し、光の入り方を計算し、意図的に制御した結果です。そしてその制御の痕跡を、見る人に感じさせない。

ただ自然に任せるのではなく、有り様を深く理解して手入れする。
そしてその作為や苦労を悟らせない。
これが日本の美学の核心であり、美容医療に通じるところだと思っています。

西洋型と日本型
美容医療のアンチエイジングの考え方には、大きく二つの哲学があります。

西洋型は、完全・対称・理想形を目指す。時間を巻き戻し、若さを回復することが目的で、加齢は修復すべき逸脱として捉えます。
日本型は、不完全・非対称の中に情緒を見出し、変化を受け容れながら最善を保つ。介入の痕跡を隠し、天然であるかのような自然らしさを求める。
先月参加したモナコのAMWC(世界最大規模の美容医療学会)でも、同じ方向感を感じました。「より自然に」「その人らしく」「加齢を受け容れながら」——そういう言葉が、世界のど真ん中で語られていました。

世界は今、日本型に向かっています。なのに当の日本が、西洋型を追いかけていることが多い。
日本人がずっと持ってきた美の哲学を、日本人こそが大切にし、その美意識に沿った美容医療を行うのが良いと私は考えています。
当院が「調律」という言葉を使う理由
加齢による変化を「作り変える」のではなく、些細な不調を丁寧に調律することで、その人の個性や魅力をより輝かせ、豊かに年齢を重ねるお手伝いをする——これが当院のコンセプトです。
ボトックス治療も同じ考え方で行っています。「シワを取る」ことが目的ではなく、加齢によって生じた表情の強張りを緩め、本来その人が持っていた自然な表情を取り戻すこと。その方の表情筋の有り様を丁寧に見て、個別に設計しています。

誰でも歳をとります。それは変えられません。
ただ、今どんな手入れをするかは、10年後・20年後の自分に確実に返ってきます。
私が美容医療で目指したいのは、「今だけ若く見える」ことではありません。
「若返りたい」という気持ちはよくわかります。でも若返りは現実的ではありません。
それよりも、若々しく、美しく歳を重ねていくための「手入れ」の一つとして美容医療を使っていただけたら——それが当院の理想です。
西田美穂
ボトックス関連のセミナー後はいつも「しかめ面」と「笑顔」の2パターンで写真を撮ることにしています。
やっぱり笑顔の方が素敵ですよね。(一部、ずっとしかめ面の方もいますね笑)
