先日、仙台で開催された第44回日本美容皮膚科学会総会・学術大会に参加してきました。今回は、ランチョンセミナー「表情筋から再考する美容医療の現在地 ―印象形成と統合的フェイシャルアプローチ―」にて、「表情筋調律」というテーマで講演の機会をいただきました。

表情筋は「止める」から「調律する」時代へ

私はこれまで、ボツリヌストキシンによる「表情筋調律」という考え方を提唱してきました。

実際、ボツリヌストキシンによって過剰な筋収縮のバランスを整えることで、シワを改善するだけでなく、表情そのものを自然で豊かなものへ導くことは十分可能だと感じています。

一方で、「調律」という言葉を使う以上、単に筋肉を緩めるだけでは説明しきれない部分があることも、以前から感じていました。

加齢した表情筋には、過剰に収縮している筋肉がある一方で、うまく使えていない筋肉や、筋同士の協調性を失っている筋肉もあります。

そのため、これからの美容医療では、「どの筋肉を止めるか」だけではなく、「どの筋肉をどう動かすか」という視点がますます重要になるのではないかと考えています。


9月からワンダーフェイスプロを導入します

近年、表情筋電気刺激装置は世界的なトレンドとなっており、さまざまな機器が登場しています。以前から興味を持ち、さまざまな機器について検討してきました。

その中で、当院では9月から「ワンダーフェイスプロ」を導入することを決定しました。

一緒に講演した聖心美容クリニック小林先生と

ただし、当院ではこの表情筋電気刺激装置を単に「表情筋を鍛える機械」として使うつもりはありません。

表情筋にとって重要なのは筋力を鍛えることではなく、患者さん一人ひとりの表情筋を丁寧にアセスメントし、表情筋全体の働き方を調えることです。

過剰に働いている筋肉は緩め、うまく使えていない筋肉には適切な刺激を与える。そのバランスを整えることこそが、「表情筋調律」の考え方だと思っています。この装置をボツリヌストキシン治療と組み合わせることでより良い表情筋調律に役立てる予定です。

現在、9月の開始に向けて準備を進めているところです。


小林先生、宮田先生から多くを学んだ学会でした

今回、すでにワンダーフェイスプロを臨床に取り入れておられる聖心美容クリニックの小林先生のお話を伺い、大変勉強になりました。

小林先生は聖心美容クリニックの美容皮膚科部門を統括していらっしゃる先生です。このワンダーフェイスプロだけでなく、化粧品や医療機器をどのような視点で評価し、導入を決めているのかというお話を非常に興味深く伺うことができました。

そもそもワンダーフェイスプロは、小林先生が世界中の機器を調査し、種々の機器と比較検討した結果、これが良いと日本へ導入の運びとなったようです。

また、世界中の美容医療機器をご覧になっている宮田先生のご意見も非常に示唆に富んでおり、改めて「機械そのものの性能だけではなく、それをどう理解し、どう使いこなすかが重要なのだ」と感じました。


当院が臨床試験を行った化粧品が10月に発売されます

もう一つ、とてもうれしいニュースがありました。

2月から5月にかけて、当院でモニターを募集し、臨床試験を行っていた岩城製薬さんの化粧品「NAVISION DR ダーマイーズプログラム」の発売が正式に決定しました。

今回の学会では、当院の患者さんにご協力いただいた臨床データを発表しました。

光治療やレーザー治療の直後は、肌のバリア機能が一時的に不安定になります。

「普段使っている化粧品を使っていいのかわからない」

「いつもの化粧品がひりつく」

そんな患者さんの悩みから生まれたのが、この製品です。

臨床試験では、施術後のダウンタイム期間における安全性が確認され、肌状態の改善に寄与する可能性が示されました。

開発段階から関わってきた製品が、10月から全国で発売されることになり、何だか子どもが羽ばたいていくみたいで、嬉しいような誇らしいような気持ちです。

研究にご協力くださった患者さんには、心より感謝しています。


長井先生の植毛のお話に、職人の矜持を見た

今回の学会で、特に印象に残った講演の一つが、ヘアー&スキンクリニック福岡の長井正寿先生による植毛のお話でした。

私は大学病院の形成外科時代に植毛手術を経験したことがあります。

しかし、長井先生の手術は、私が知っている植毛とは全く別物でした。

一本一本の毛の向き、生え際のデザイン、時間が経っても自然に見える三次元的な毛流の設計。

さらに、ドナー採取部も目立たないように丁寧に間引きながら採取し、毛球一つひとつを愛護的に扱う姿勢には、まさに職人魂を感じました。

最近は「トルコ式植毛」という言葉もよく耳にしますが、採取方法や移植技術、そして何より「長い年月が経っても自然であること」を追求する姿勢は、全く別次元のものでした。

長井先生は、「やってはいけないことと、やっていいことの見極めができない医療が、患者さんを不幸にする」とおっしゃっていました。

これは植毛に限らず、美容医療全体に共通する問題だと、改めて考えさせられました。


学会で得た刺激を、患者さんへ

正直なところ、最近は「仙台は遠いし、クリニックを休診にしてまで学会に行く必要があるのだろうか」と思うこともありました。

患者さんにもご迷惑をおかけし、スタッフにも負担をかけてしまうからです。

それでも今回の学会では、多くの先生方との出会いがあり、新しい知見に触れ、自分の仕事を見つめ直す機会をいただきました。

表情筋、化粧品、植毛。

分野は異なっていても、根底にあるのは、「患者さんにとって本当に良いものは何か」を問い続ける姿勢なのだと思います。

今回得た学びや刺激を、これから少しずつ当院の診療に還元していきたいと思います。

帰りの仙台空港で、ようやく仙台らしいものを食べました。美味しかったです。仙台は七夕祭りの飾り付けが綺麗でした。せっかく仙台まで行きましたが、私の仙台は学会場とホテルと空港でほぼ完結したのでした。

小林先生といっぱいお話ができたのがすっごく楽しかったなあ・・・小林先生ありがとうございました。