2026年5月28日、第114回 日本美容外科学会のスペシャルシンポジウムにて、「ボツリヌストキシンによる表情筋調律 〜全顔アセスメントに基づくBTx-Tuningの実践〜」というテーマで講演を行いました。

今回の講演でお伝えしたかったのは、ボツリヌストキシン治療は単に「シワを取る治療」にとどまらず、表情筋の動きを全顔でアセスメントし、適切に治療を行うことで、シワの改善だけでなく、顔全体の印象改善や、より自然で豊かな表情の実現にもつながる治療である、ということです。

患者様がボツリヌストキシン治療を希望されるとき、表面的な主訴は「眉間のシワ」「額のシワ」「目尻のシワ」などであることが多いです。
しかし、その背景にある本当のニーズは、単にシワをなくすことだけではなく、

・うまく笑えるようになりたい
・不機嫌そうに見られたくない
・疲れて見える印象を改善したい
・若々しく、自然に見られたい
・美しく、やわらかい表情でいたい

という「若々しさや美しさ、そして豊かな表情を実現すること」にあると考えています。

そのため、私たちが大切にしているのは、主訴となっているシワだけを見るのではなく、そのシワを生み出している表情や筋肉の使い方まで評価することです。また、単独の表情筋だけでなく、協調して働く筋肉同士の関係や挙上筋・下制筋のバランスも確認します。さらに、患者様が意識して作る表情だけでなく、会話中や安静時など無意識に現れる表情も観察しながら、表情全体の状態を診ることを大切にしています。

表情筋調律とは

私は、ボツリヌストキシンを用いて表情筋の働きを調整し、表情全体のバランスを整える治療を「表情筋調律」と呼んでいます。その中でも、ボツリヌストキシンによって表情筋のバランスを整えるアプローチを「BTx-Tuning」と位置づけています。

表情筋は、ひとつの筋肉だけで単独に働いているわけではありません。
眉を寄せる、口角を上げる、目を細める、顎に力が入る――こうした表情は、複数の筋肉が協調しながら作られています。

そのため、ひとつの筋肉だけを強く止めすぎると、シワは減っても、表情全体のバランスが崩れてしまうことがあります。
自然で美しい表情を目指すためには、「どの筋肉を緩めるか」だけでなく、「どの動きを残すか」「どの筋肉とのバランスを見るか」が重要です。

表情筋調律のための3つのアセスメント

今回の講演では、表情筋調律のアセスメントとして、次の3つをお話ししました。

1. 強張りの検出

まず重要なのは、患者様ご自身も気づいていない表情筋の強張りを見つけることです。

たとえば、眉間の皺眉筋、顎のオトガイ筋、口輪筋などは、無意識のうちに過緊張を起こしやすい筋肉です。
眉間や顎、口元の強張りは、不機嫌そうに見えることや、笑いづらさにつながることがあります。

患者様は、鏡の前で表情を作ることはできても、日常生活の中で自分がどのような表情をしているかを正確に把握することは難しいものです。
そのため、診察では、作った表情だけでなく、入室時、会話中、説明を聞いているときなど、意識していない表情を観察することを大切にしています。

2. 挙上筋と下制筋のバランスを見る

表情筋は、上に引き上げる筋肉と、下に引き下げる筋肉がバランスを取りながら働いています。

たとえば口角では、大頬骨筋などの挙上筋が口角を引き上げ、口角下制筋や広頚筋などの下制筋が口角を引き下げます。
眉周囲でも、前頭筋が眉を持ち上げ、皺眉筋、鼻根筋、眼輪筋などが眉を引き下げます。

加齢や表情の癖によって、このバランスが崩れると、下制方向の力が強くなり、表情が重く、硬く見えることがあります。
そのため、ボツリヌストキシン治療では、単にシワのある筋肉だけを見るのではなく、挙上筋と下制筋のバランスを評価することが重要です。

3. 個別性を把握する

同じシワや同じ表情の悩みであっても、治療設計は患者様ごとに異なります。

たとえば、眼瞼下垂がある方では、前頭筋がまぶたを開けるための代償として働いている場合があります。そのような方に額のボツリヌストキシンを強く作用させすぎると、まぶたが重く感じられることがあります。

また、「笑ったときの目尻のシワは残したい」といったご本人の希望や、職業・生活背景も治療設計に関わります。例えば、接客業の方では、笑ったときの目尻のシワがあることで優しく親しみやすい印象につながることがあります。そのため、すべてのシワをなくすことが必ずしも理想とは限りません。大切なのは、シワを消すことではなく、その方らしい自然な表情や魅力をどこまで残すかです。

表情筋調律では、「打つ部位」を決めることと同じくらい、「打たない部位」を判断することが重要です。

ボトックスは表情を奪う治療ではない

ボツリヌストキシン治療に対して、「表情がなくなるのではないか」「笑えなくなるのではないか」と不安を持たれる方は少なくありません。

しかし、適切にアセスメントし、必要な筋肉に必要な量を作用させれば、ボトックスは表情を奪う治療ではなく、本来の表情を取り戻す治療になり得ます。

強張りを緩めることで、笑顔が作りやすくなる。
下制筋の過剰な働きを調整することで、口角が自然に上がりやすくなる。
表情全体のバランスを整えることで、不機嫌そうな印象が減り、元気そうな印象になる。

これが、私たちが考える「表情筋調律」です。

これからも自然で美しい表情を追求して

今回の学会発表では、実際の症例を通して、全顔アセスメントに基づいたBTx-Tuningの考え方と実践についてお話ししました。

ボツリヌストキシン治療は、シワを減らすだけの治療から、表情の質を整える治療へと進化していく可能性があります。

Beauty Tuning Clinicでは、これからも解剖学的知識と臨床経験に基づき、患者様一人ひとりの表情に合わせた、自然で美しいボツリヌストキシン治療を追求してまいります。

 

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座長のお仕事もありました。

はじまるよー!

佐藤もも子先生のご講演は、真摯にご自身の経験をまとめられており、会場の先生から大変好評で、有意義でした!
注入治療の超音波診断で世界的権威であるStefania先生の執筆された教科書と拙著を交換していただき、るんるん。

この後、帰りの飛行機が飛ばなくなったことが発覚し、慌てて飛行機を変更。その結果、博多座公演のために福岡に向かっていた歌舞伎役者さん(スーパー歌舞伎にご出演の頃から拝見していました!)と便が一緒になり、少しばかりお話しさせていただくことができ、疲れも吹っ飛んで、超るんるんで帰途についたのでした。