先日、福岡で開催された医療従事者向けセミナーにて、
湘南美容クリニックの西川礼華先生とご一緒に登壇させていただきました。
同じボツリヌストキシン(BTx)治療を扱う立場でも、
大規模クリニックと小規模クリニックでは、課題や信頼のカタチが少しずつ異なります。
その違いを踏まえながら、お互いの現場から得た知見を共有できたことは、
とても貴重な経験でした。
西川先生のご講演は、いつもながら流れるようでわかりやすく、
会場の空気を自然に引き込む力があります。
ご一緒できて本当に光栄でした✨

このセミナーは全国配信され、1,000名超の方が聴講されたとのこと。その後は、会場の約100名の先生方とディスカッションを行い、
エルムクリニックの菊池先生、モデナクリニックの箱田先生とも
それぞれの規模のクリニックでのBTx治療の進め方や啓発のあり方についてお話しでき、刺激を受けました。

小さなクリニックの「信頼のサイクル」
さて、本ブログでは、私がこのセミナーでお話しした内容についても少しご紹介したいと思います。
私は「小規模クリニックにおける信頼の積み重ねと、BTx治療の広がり」をテーマにお話ししました。
Beauty Tuning Clinicは、2018年に私を含めて4名の小さなチームから始まりました。
開業当初は、広告を出す余裕もなく、知名度もほぼゼロ。
それでも少しずつ「信頼のサイクル」を築くことで、
今では県外からもボトックス治療を受けに来てくださる方が増えました。
毎朝の申し送りでは、その日ご来院されるすべての患者さまについて、
治療内容だけでなく背景まで共有しています。
「お嬢さまの結婚式が近い」「腰に負担がかかりやすい」など、その方が何にご興味があり、何がご不安か、などを人として知ることから治療は始まります。
そうした積み重ねが、患者さんとのつながりを深め、より良い医療に繋がると我々は考えています。
まずはボトックスに「一歩」踏み出してもらう
ボトックスに興味があっても、「ちょっと怖い」「失敗したらどうしよう」と感じる方は少なくありません。
そこで始めたのが、お試しボトックス制度でした。

初めての方に、ボトックスでの成功体験を感じていただきたい!
それが次のステップへの信頼につながると考えたのです。
初期は眉間のみに絞って実施し、確実に「変化を実感できる」体験を届けることに注力しました。
その結果、多くの方がリピートしてくださり、
さらに他の部位への治療にも関心を持たれるようになりました。
“体験 → 信頼 → 拡がり”という流れは、今も当院の治療方針の中心にあります。
表情筋は「バランス」が重要
ここで少し専門的な話を。
ボトックスは、筋肉をただ「止める」ものではありません。
私が大切にしているのは、表情筋全体のバランスを整えるという考え方です。
例えば、眉をしかめる筋肉(皺眉筋や鼻根筋)と、眉毛を持ち上げる筋肉(前頭筋)は、互いに拮抗しながら動いています。
笑う時には口角を持ち上げる筋肉(大頬骨筋)と口角を引き下げる筋肉(口角下制筋)はバランスをとっています。
そのバランスを見極めて調整することで、
全体の印象が自然に、そしてより、魅力的を引き出すことが可能です。

ボトックスは「止める」治療ではなく、
動きをチューニングする治療——それが私たちの考える BTx-Tuning® です。

正しい製剤理解と抗体の話
市場には複数のボツリヌストキシン製剤がありますが、
それぞれ精製法・成分・保管条件・単位の定義が異なります。
「1単位=同じ」ではなく、互換性もありません。
だからこそ、製剤の特性を理解したうえで使用することが重要です。
また、「抗体ができると効かなくなる」とよく言われますが、
ボトックスビスタの研究では、中和抗体の発生率は0.5%前後、
臨床的に影響が出るのはさらに稀で0.08%というDATAもあります。(Jankovic J et al., Toxins 2023 )
“効かない=抗体”ではなく、技術やアセスメントについても見直す必要があります。
継続がシワの未来を変える
ボトックス治療の真の魅力は「継続」にあります。
定期的な治療を重ねることで、
表情筋の過剰な緊張がやわらぎ、安静時のシワまでも穏やかに変化していきます。

ボトックスは「今の表情」を整えるだけでなく、シワの未来を変えていく治療、
私はそう信じています。
ご機嫌が伝染する社会へ
人の感情は表情を通して周囲に伝染します。
これを「情動感染(emotional contagion)」といいます。

眉間のこわばりがやわらぐと、
自分の気持ちも、そして相手の表情も柔らかくなる。
そんな小さな変化の積み重ねが、
穏やかでご機嫌な社会につながるのではないか
そう思いながら、私は毎日ひとりひとりの表情と向き合っています。
Beauty Tuning Clinic
西田美穂